|  山に向かいて 窪田 泉
 わがこころ驕りてあれば
 山はきびしく
 わがこころ貧しくあれば
 山はやさし
 
 こころうなだれ
 おもいみだるる日
 山に眼をあげ
 神を呼ばわん
 
 (「曠野の詩」祈の友同人信仰詩集九〇頁より 静岡 三一書店 一九五四年刊)
 ・著者は、青山学院英文科卒。第一回山梨文学賞受賞。一九四七年召される。
 
 若くして召されたこの作者、山を見つめる敏感な心が感じられる。自然というのは、私たちの魂の状態を反映して見えてくる。私たちの心が固く無感動になっているとき、何かに気を奪われて忙しくしているとき、自然もまた私たちには無関心なように何も語りかけてはこない。
 あるいは、高ぶりの心あるときには、自然もまた私たちに厳しくなり、なにもそこから汲み取れなくなる。
 しかし、ほかに慰めもなき苦しみや孤独にあるとき、砕かれた心もて山を見、樹木や野草に触れるとき、それらは私たちに近づき、やさしく語りかけてくる。
 この詩は、聖書にあるつぎの詩が胸中にあってつくられたものであろう。
 
 私は、山に向かって 目をあげる
 わが助けはいずこより来たるか
 天地を造られた主より来たる       (詩編一二一より)
 |