リストボタン鷲のつばさに乗せて    2007/12

神の導きというのもなかなか感じられない場合が多い。どこに神が存在するのかそれすら確信が持てないということも多い。
しかし、人間から見る目、人が感じることはきわめて表面的なことでしかない。
旧約聖書には、神がエジプトで奴隷状態の苦しみと迫害にあったイスラエルの民をそこから助け出して砂漠状態の荒野を導いてこられたことが記されている。
人々がさまざまの苦しみを経てようやく神の山シナイに着いたとき神はつぎのように言われた。

あなたたちは見た
私がエジプト人にしたこと
また、あなたたちを鷲の翼に乗せて
私のもとに連れてきたことを。 (出エジプト記十九・4

神は鷲のつばさに乗せてイスラエルの人々を運んできたという。しかし、人々はそのような力強さを感じることなく、水もなく、食物もなく、モーセを殺そうとしたほどの苦しみの連続であった。
しかし、それは人間の側からの感じ方であって、神はそうした苦しみや困難にもかかわらず全体として力をもって翼に乗せて運ぶように守って導いてきたというのである。
主イエスが十字架にかけられたときには、あまりの激しい苦しみのゆえに、「わが神、わが神、どうして私を捨てたのか!」と叫んだが、イエスのようなお方でも神が自分を捨てたというような実感を持ったほどであった。
しかし、そのような叫びにもかかわらず、神はイエスをたしかに「鷲の翼」に乗せて御国へと運んだのである。最初の殉教者であったステパノも、パウロをも、またその後に続く無数のキリスト者たちにおいても同様である。
現実の困難は圧倒するほどのことがある。しかしそれにもかかわらず、神は力強い翼に乗せて今も私たちを運んで下さっている。そしてそれだけでなく、この世界全体をもやはり力ある翼に乗せて、み国へと導かれているのである。
「すべてのものは、神から出て、神によって保たれ、神に向かっている。」
(ローマ信徒への手紙十一・36より)
朝ごとに

最近は、朝ごとに闇の中に輝く光を見る。それは夜明けの東の空にかがやく明けの明星を見るからである。まだみんなが寝静まっている早朝から、少し明るくなってくる六時すぎになってもなお、最後まで輝いているのが明けの明星、金星である。
目に見えるもので最も天の国に近いもの、それが星である。そしてとりわけ夜明けに闇からの解放をつげ、ここに光の国がある、ここに汚れなき世界がある、と力強く、しかも静かに告げているのが明けの明星である。
そしてこの見る者をして思わず惹きつけるような強い星の輝きは二〇〇〇年も昔から、主イエスを象徴しているとされてきた。聖書の最後の書である黙示録のその終りの章にて、イエスが「私は明けの明星である。」と語ったことが記されている。(黙示録二二・16
この黙示録はローマ帝国のネロ皇帝のはげしい迫害のときに記された文書である。そうした闇の状況のなかに、黙示録の著者ははっきりとその闇を貫いて光るイエスを示されていたのである。
そしてそのイエスを、目に見えるものとしては最もあざやかに指し示すものが明けの明星であった。

救い主イエス・キリストが表れるということ、闇の中で苦しむすべての人たちを救うために表れるということは、その誕生のはるか七〇〇年ほども昔から力ある預言者イザヤによってその出現を預言されていた。

闇の中を歩む民は、大いなる光を見
死の陰の地に住む者の上に、光が輝いた。
あなたは深い喜びと
大きな楽しみをお与えになり
人々は御前に喜び祝った。
(旧約聖書・イザヤ書九・12
この預言は何も戦争のない平和なときに語られたのではなかった。この預言者がこうした啓示を受けたその時代は、北方から大国が攻撃してきて、国の北部地方がその支配下に置かれ、危機的状況にあったのである。時代がどのように混乱し、人々が戦乱で死に、また戦いのために食物もまともにないような暗い状況にあっても、神はそうしたあらゆる状況にもかかわらず神の遠大な御計画が着々と進んでいることを告げられたのである。
このイザヤが受けた預言そのものも、闇に輝く大いなる光であった。そしてイザヤが預言したこの光は、それから七〇〇年も後になって現実に目に見える人間の姿、イエス・キリストとして世界に表れたのである。
今年の冬の季節、今しばらくはこの主イエスを象徴的にあらわす明けの明星を見ることができる。寒さに心が引き締まるような明け方にあって、ただ、一点の光で輝くだけ、という単純さでありながら、このような深いメッセージをたたえつつ、しかも広大な夜明け前の空を舞台に輝いている美しさは他に例がない。
これは、真理が単純率直であり、幼な子のような心がなくてはその真理が分からないと主イエスが言われたことを思い起こさせるものがある。
朝ごとに神はその明けの明星によって私たちに語りかけている。どんな闇にあっても、そこに光がある、神の光はいかなる闇にも打ち勝つのだと。


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