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センブリ
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センブリ           徳島県   中津峰山    2006.10
 10月のある日、長い間行く機会のなかった近くの中津峰山(標高750m)の中腹まで短時間、車で行く機会がありました。かつては車など使わず、ふもとから歩いて登っていたこの山なみですが最近は時間がなくて訪れる機会もなかった所です。
 途中の所々で車から下りて秋の山の澄んだ大気に触れ、植物のたたずまいに触れることができましたが、今まで一度も入ったことのない脇道へと歩いたところ、思いがけずこのセンブリと、アサマリンドウに出会ったのです。最近は山にほとんど行けなくなったために、センブリはもう20年近く出会ったことがなかったものです。
 この植物は、有名な薬用植物。健胃薬として消化不良,食欲不振などの家庭薬の原料として用いられてきました。湯の中で1000回振り出してもまだ苦いほどなので、センブリ(千振)という名がついています。この細い葉をかむと強い苦みがあり、この名前が納得できます。
 高さ10cm〜40cm程度。白い花びらは5枚、紫色の筋が見えます。 山には至るところで植物が繁っていますが、このセンブリに出会うことはごく稀です。 ほとんどだれも通らない道であったゆえにこのように残されていたものです。
 薬という漢字は、草かんむりの下に楽しむと書くので、草を楽しむ、野菜や植物を味わい楽しむことが薬になる、といわれることもあり、植物がそのまま薬になる、というようにも受けとられてきました。たしかに、肉食よりも大豆や野菜、果物などの植物性の食物がからだにはよいということはよく言われています。私たちにとっても、このセンブリのような野生の美しさに触れることは、魂の栄養となり薬となります。
 植物は動物が生きていくには不可欠な酸素を作り、またその根や実、葉や茎が人間の食物や薬にもなり、さらにその緑の色で目にもよく、その花によって人間の心に対してのメッセージを注ぎだしています。
 主イエスはいろいろの教えを、みんなたとえを用いて語りました。それは「天地創造の時から隠されていたことを告げる」ためであったといいます。(マタイ13:34-35)  
 センブリの、どこかひきしまった、そして透き通るような感じをたたえつつ、天に向かって咲いている花は、たしかに神の国のことをたとえで私たちに語りかけているように思われます。
(写真、文ともにT.YOSHIMURA)